シアターΧ提携公演

『春琴抄』  原作 谷崎潤一郎

春のめざめか 淡雪か  とろりとろける 花の蜜
見えない糸に つながれて  転がり落ちる 恋の坂


脚本/作詞/演出    ジェームス三木
出演    坂東扇菊 中西和久(京楽座)


浄瑠璃/竹本綱大夫    文楽三味線/鶴澤清二郎
美術/石井強司    照明/田中喜久夫
音響/原嶋紘平(SONIC WAVE)    舞台監督/筒井昭善


平成17年3月9日(水)〜3月13日(日)  6回
シアターΧ   制作 名取事務所


春琴抄

<あらすじ>
谷崎潤一郎の「春琴抄」を脚色したもので、ストーリー展開を語り部が勤め、同時に佐助の役を演じるという方法で、登場人物を春琴、佐助、語り部に集約させた。
この物語は「鵙屋春琴伝」という小冊子をもとにして、幕末から明治にかけて、主従でもあり師弟でもあり、かつ実際上の夫婦でもあったひとくみの男女の異様な至福にふるえる、ある愛を描いている。
春琴は幼少の砌失明し糸竹の道を志す。奉公人の丁稚、佐助に手をひかれ師匠のもとへかようことから端を発し、ふたりは師弟になり、子を身ごもったことから夫婦になる。
なにものかによって春琴は顔面に火傷を負わされ、天性の叡智は損なわれることはなかったものの、生まれつきの驕慢と吝嗇とはこれを抑えざるをえなくなったとき、2幕へと運ばれる。
ある日、佐助は両眼に縫い針を突き刺し、自らめしいとなり、ついに春琴と同じ世界に生きる。


<趣旨>
虚構と現実とがあたかも史実のごとく渾然一体に融化された谷崎の「春琴抄」の舞台化は視覚的要素を様式美として如何に取り込むかに掛かっていると考える。
「女」という枠組みをはるかに超えて存在する女人像、その女人像の永遠化はいかに可能か、同時にエロスの永遠化は、それとの一体化は如何に可能か。
谷崎の追求した文章芸を戯曲の中に現出させたい。この愛の混沌をリアリティー豊かにひとつの新しい演劇の形として表現したい。