「GENJI」アイスランド、ノルウェー公演

構成・演出/坂東扇菊  
振付・出演/近藤良平 坂東扇菊  
声明/海老原廣伸 新井弘順 佐野広隆 玉田法信 平田真紹 斎藤説成  
雅楽演奏/野田説子 楠義雄 成田智明 山本昭淳

舞踊、音楽において伝統と現代の融合するこの作品は正に東洋と西洋を体現するもので、日本文化への理解が更に促進されると期待される。 

アイスランド国立劇場への招聘の経緯としては、来年2006年は日本との外交関係設立50周年記念に当たり、その記念行事として、アイスランド大使オスカーソン氏、国立劇場芸術監督ティナグンラウグスドッティル氏より推薦を受け招聘の運びとなる。 
ノルウェーにおいては、本年の外交関係樹立百周年を機に我が国の文化全般に対する関心が高まり、USF文化会館長カリークレッペ氏より日本からは初めての団体として招聘される。

新聞名 MORGUNBLADID
2006年6月12日 文化欄
記事タイトル 時空を超えて 『源氏』 日本客演
記者_Ingibjorg Bjornsdottir
翻訳 Magnea Marionsdottir(英訳) 嶋野 冷子 (日本語訳)

写真上の文
ダンサーと振り付け家、近藤良平と扇菊。4人の音楽家が雅楽を演奏、そして、6人の声明。

写真下の本文
ダンサーと振り付け家、近藤良平と扇菊。4人の音楽家が雅楽を演奏、そして、6人の声明。
『源氏』はアイスランド、日本両国の外交樹立50周年記念行事の一環としての公演で、国立劇場で客演される。
『源氏』は11世紀の日本文学の一章を基にしている。貴族光源氏の妻、葵の上は夫の愛人の嫉妬の怨念に病んでいる。この怨霊は僧呂の祈祷により解脱することができ、姿を消す。この公演はモダンダンス、日本皇室音楽であり、能と平行に発展した雅楽、仏教の聖典を詠う仏教音楽声明のコラボレーションである。
舞台はほとんど空、ランプが二台あるだけで、幕が袖に、椅子と、箱が何個かおかれている。そして、音楽家が舞台に現れ、舞台後方に座る。音楽家達は暗い色をした日本の伝統的衣装をまとい、声明家達は、全員が年配の僧であり、洗練された、カラフルな衣装をまとっている。 そして、二人のダンサー、妻を演じる扇菊と夫である近藤良平。彼らのダンスはモダンと伝統的な踊りの混合である。ゆっくりとそして、美しく形式化された手足の動きは、素晴らしいダンサーである近藤が、終盤で敏速、パワフルな踊りをするまで続いた。 病む妻を演じる扇菊は頭を垂れ細かいステップで動く。内面の葛藤は彼女の動きの中には明らかにならない。しかし、彼女が嫉妬に捕らわれると、まとっていた白い衣装ではなくなる。代わりにグレイの透明な衣装をまとい、角のある悪魔のような形相になり、取付かれた動きやふるまいは何か脅かしを感じる。
声明はこの興味深い公演に大いに効果があった。独唱、あるいは合唱として彼らの神秘的な歌は観客に時空を超える体験をさせた。聴衆は、この特別な作品に魅了され、モダンダンスと混合した美しい純真な日本の芸術は、我々西洋人に受入やすいものにした。




『源氏』 ベルゲン新聞 劇評

6月12日 10日、11日のUSFでの公演、『源氏』では、嫉妬と苦悶が描かれていた。
この作品は約1000年前に書かれた小説に基づいている。
原作となった小説だけではなく、源氏では他の日本古典芸能が使われている。 雅楽(日本の皇室音楽)、声明(仏教儀礼音楽)、そして日本舞踊と能舞台の要素である。振り付けはふたりのダンサー。近藤は、コンテンポラリーダンサーで、扇菊は著名な日本舞踊家である。
ベルゲンの前ににレイキャビックで公演を行っている。


世界最古の小説

54帖からなる源氏物語は紫式部という女性作家に書かれた、世界初の小説といわれる。 その一部が、光源氏の愛人が嫉妬、情念により、悪魔の形相に変わっていく。そして、物語の中で彼女はまた平常の姿に戻っていく。『源氏』は能の有名な作品『葵の上』をもとにしている。

壮絶な表現

源氏の近藤、女の扇菊の踊りは、我々観客には非常にエキゾチックなものにうつったが、同時に彼らの踊りは、写実的に豊かであり、観客にとって理解し易いものである。ドラマチックな照明の効果でダンスの表現がさらに強くなった。また、雅楽、声明はこのクロスオーヴァーの作品を一層効果的に演出していた。
この公演は国際交流基金の助成で実現され、アイスランド、日本外交樹立50周年記念事業の一環でもあった。

記事 オーラヴ ゴルセット
写真 オーリアン ダイス
翻訳 嶋野 冷子

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