東京公演(銕仙会舞台)<2000年5月>
「御前に」「いとあはれになつかしうをかし」



「不吉なまでに美しい」と語られた光源氏。
その人をめぐって女が、宮廷がゆれる。
きらびやかに見える王朝世界を無常が支配する。
千年の時を経て、変わらぬ人間の生を見る。


2000年 源氏物語が誕生してから約千年の歳月が流れた。
能の『葵の上』は『源氏物語-葵の巻』を観客が知っていることを前提に舞台化した作品で、主人公の情念が現代にも共通した普遍的な思いであることを訴えている。
その『葵の上』を題材に言葉による表現を用いずに、舞踊で視覚に訴えた表現を試み、能楽の自由な空間と時間の処理、主題などをそのまま生かすべく、構成を能の表現、テンポの流れを支配する『序破急』(世阿弥・風婆花伝)に求めた。
能楽の番組構成になぞらえ、狂言からも一曲、『棒縛』を題材に軽妙洒脱な狂言の世界にダンスで挑戦。打ちっぱなしのコンクリートの壁に囲まれた近代建築の中に能舞台が置かれていると言った、現代と悠久の年月を感じさせる能の歴史が同時に一つの空間を成してるような銕仙会舞台に巡り会えたのは、この作品を作る上で重要な要素の一つであろう。

"御前に" 『棒縛』より

構成・振付:坂東扇菊
振付:近藤良平
出演:藤田善宏・鎌倉道彦・今津雅晴


"いとあはれになつかしうをかし" 『葵の上』より

構成・振付:坂東扇菊
振付:近藤良平
出演:坂東扇菊・近藤良平
照明:田中喜久夫/音楽:宮本光雄/衣装:岡千勢子


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